普段からチョコレートを愛しチョコレートを常備するチョコラ―になると、バレンタインやからと限定版チョコにうつつを抜かす人々を、微笑ましくも生暖かく遠巻きに眺めるのが嗜みってなもんです。ザ・チョコラ―ことカンナです。麦チョコは世界平和の味。

さて、ただいま2月文楽公演真っ最中でございまして、第一部「五条橋」「伽羅先代萩」、第三部「冥途の飛脚」と観てまいりました。
来週第二部「曲輪文章」「菅原伝授手習鑑」観てくるよ!楽しみだよ!

今回何度か観た事ある演目だったので、試しにイヤホンガイドなしで観てみました。まあ、素浄瑠璃や国立劇場以外はイヤホンガイドなしで観てますし、そろそろ解説なしでも演目についていけるやろと。
そしたらまーほぼ三味線しか目がいきませんね!「五条橋」なんて100%三味線しか観てませんでしたね!めっちゃ楽しかったですけどね!
というわけで今回は、三味線をよく知らない方は三味線なんぞ観てもなーんも楽しくないかもしれないので、文楽における三味線の楽しみ方を、誰にも頼まれてない上誰も望んでないかもですが紹介します。

その1:構え方を観る
第一部「五条橋」のような景事や、第三部「冥途の飛脚」内「道行相合かご」のような道行ものの時、太夫も三味線もずらっと並びます。
そしたらもー見比べ放題!長唄や清元も並びますが、それらに比べて義太夫はまー個性豊かです。三味線の胴を置く位置一つとっても膝に近い人遠い人、棹の角度が浅い人深い人いろいろ!
そんなもん観て何が楽しいと言われても、楽しいんやからしゃーないです。
上半身がリズムに乗って揺れる人、まったく揺れずどっしり弾く人、目を閉じる人空を見つめる人、いろんな人がおるのに音はきっちり揃ってる。
感覚的には運動会の入場行進見てる感じでしょうか。
ちなみに清治師匠が立三味線の時の統率の取れかたはすさまじいです。分身の術か!ってくらい撥の速度が一緒で、惚れ惚れします。まあ、技芸員さんはそれどころじゃないんでしょうけど。

その2:糸の押さえ方を観る
三味線の糸は左手の、主に人差し指と中指と薬指の爪で押さえます。
この「爪で押さえる」がちゃんとできるとクリアな音になりますが、初心者のうちは指先が痛いのでついつい指の腹で押さえがち。きっちり爪を立てて糸を押さえると、正面から爪が見えません。
とはいえ薬指で押さえる時は多少指を伸ばす必要もあるので、腹で押さえてしまうのもやんぬるかな…と思いきや、技芸員さんの中には薬指でもきっちり爪を立てて押さえる人がいまして、それを見るのが至福です。なんか、技を見てる!って感じ。
あと爪で押さえてちょっと揺らして音をひずませるのを見るのも好きです。妖怪ものとか静かな嘆きのシーンとかでよう揺れます。力任せじゃなく、丁寧な指さばきは見ててうっとりします。
機会がありましたら三味線弾きさんの左手にご注目ください。ひらひらと、踊ってるように見えたらあなたも立派な変態です。ウェルカム!

その3:サワリ
三味線には「サワリ」というものがあります。ギターでいうところの「ファズ」みたいな…なんかガサガサした、ノイズのような響きです。
長唄や地唄はサワリが弱めで、津軽三味線はサワリめっちゃ強いです。びんびん利かせます。
私はサワリびんびんが好みですが、言うてノイズなので耳障りと感じる人もいます。で、義太夫もサワリが強い方でして、その中でも強弱があるのでその音質も聴いてて楽しいです。
あくまで個人的感想ですが、清介師匠はサワリ控えめで、まろやかでコクのあるイメージです。対して錦糸師匠はサワリ強めで、力強くてキレのあるイメージです。
サワリは繊細で、糸の伸縮や湿気ですぐ出なくなるので、糸巻で調整して上手くサワリが出ると、観てるこっちも「わー出た出た」と嬉しくなります。雨の日は上手く出ないので、ちょっと弾きにくそうです。でも調整してなんとか出します。みたいな事を見て聴いて楽しみます。伝われ…!

他にも、浄瑠璃にリンクした描写の音とか心情を表す音の出し方とか、色んな音が聴けて楽しいです。
かと思うと浄瑠璃とまるで逆…今回で言うと第一部の「伽羅先代萩」の子を亡くした母親が嘆く場面、太夫が嘆きの文章を滔々と語る横で弾くのがちょっとしたお囃子みたいな明るい曲調の三味線で、その温度差たるやすさまじい衝撃です。

一度小さな会場で素浄瑠璃を観た時、上の絵のようにほぼゼロ距離で三味線を観る機会がありまして、至福のひと時でした。まあ友之助さんにとっては災難やったと思います。てか自分がゼロ距離で三味線観られたら災難でしかないです。
でも願わくばまた三味線をゼロ距離で観たいもんです。左手ゼロ距離とか最高やね!最高やね!

来週は第二部、「曲輪文章」は初見ですが、傾城の人形が出るのできっと華やかな舞台やと思います。とはいえひたすら三味線が楽しみです。